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2007.07.29

『河童のクゥと夏休み』(ネタバレ)

 安原さんが「オッサン」役で出ている『河童のクゥと夏休み』を初日に見てきた。私の行った映画館は閑散としていて残念。「キューリのキューちゃん」の試供品を配っていた。
 パンフによると、アフレコは06年11月に行われたそうだ。ということは「いろどり橋」公演の合間に録音したのだろうか。
 試写会レポート等で内容を知っていたので、冷静に見てしまったのが残念。情報を入れずに行った方が、ストレートに物語の中に入り込めるだろう。
 とてもいい作品なので、大勢の人に見てもらいたい。もちろん安原ファンとしても満足の出来。
 内容に関しては別ページで。
 それにしても、これで安原さんは渡辺歩、細田守、原恵一と、アニメ界の若手旗手3監督との共演を果たしたことになる。次はどんな作品に出るのか、楽しみだ。

 「オッサン」はクゥを見つけた上原家の飼い犬。野良だったのを康一に拾われ、顔立ちから「オッサン」と名付けられたのだ。だみ声で、安原さんの年相応の雰囲気だ。
 クゥとはすぐ仲良くなる。テレパシーで会話するが、人間にもできるのかは不明(クゥはラストで康一と話しているが)。クゥ視点のシーンにならないと登場しないので、喋るのは上映30分ほどしてから。
 人間という生き物に対して複雑な感情を持っている。その理由は前の飼い主についてクゥに語るシーンから分かる。「オッサン」の前の家にも男の子がいて、仲良しだった。しかし、中学に入っていじめられ、その憂さを「オッサン」にぶつける日々が続いた。最初はそれで気が晴れるならと耐えていた「オッサン」だが、ついに耐えきれず脱走し、康一に拾われたのだ。上原家の人々に不満はないが、いつ何時、前の飼い主のようになってしまうか分からない。人間というのはそういう生き物なのだと、クゥに諭す。
 その後、テレビ局に出たクゥが父親の腕と再会してパニックになった時、東京タワーまでクゥを乗せて逃げるが、車に轢かれてしまう。今際の際に「オッサン」が思ったのは、かつての飼い主のこと。自分がもう少し我慢すれば良かったのではないかと、自分しかすがれる者がなかった少年を気に病みながら息を引き取る。何といういじましさ。試写会レポートの時点で号泣者続出なのも納得の演出だった。
 ちなみに、テロップではゴリの前のラスト2と言う破格の扱い。『パーマン』録音監督の大熊昭がいるので、出演交渉は余裕だっただろうが、原監督は出演者を自分で選んだという(『サイゾー』より)。やはりバードマンで安原さんを知ったのだろうか。非常に気になる。

 もちろん、本編のクゥをめぐる物語も良かった。レポートで指摘されたとおり、康一と妹、瞳の関係はミツ夫とガン子を思わせる。康一と仲良くなる紗代子も印象に残った。教室で一人で読書しているシーンなど、昔の私を思い出された。彼女は両親の離婚で引っ越すのだが、康一がクゥを見せに自宅を訪れるシーンで、男女の靴が並べられており、紗代子がおもむろに男の靴を投げ捨てるシーンがある。これは父親と新しい女ということなのだろうか。唯一気になるシーンである。

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コメント

紗代子の靴について

これは逆に、義理の父になるのであろう男に対しての、抵抗、宣戦布告なのかもしれないと私は見ました。

通学路で倒された時に、母親のようにどうのこうのという悪口を言われていたので、離婚で母親と二人暮しが、新しい男が入って引越しする(再婚もからんで)・・・という実情ではないかな。

それまで、諦めの気持ちでなすがままであったろう紗代子が、クゥと康一とのことで、自分も戦う決意をした。
その最初の意思表示が、あの行動だった。

「私はまだあなたを父親と認めていない。」という。
いつか認めるとしても、はっきり敵意を持って闘うのは必要なことだ。
それが、守られなければならない母親から敵意を向けられても。
でも、今の紗代子なら大丈夫だ。
彼らがいてくれるから。

投稿: 星菜 | 2007.09.02 18:39

「アニメスタイル」の原恵一インタビューを読むと、星菜さんの説が近いと思います。ここではあえて訂正していませんが。

投稿: 大田康湖 | 2007.09.02 22:22

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受信: 2007.08.07 22:09

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